これは家のデザインが少しづつ固まってきた頃の「建具」にまつわるお話です。

建具の意味

家の内部の部屋と部屋の境界には「壁」があって「建具」を通して人は空間を移動する。「建具」は、その空間と空間をつなぐトビラであり、異なる時空間をつなぐ役割を持っている。

その建具の機能やデザインで室内環境や雰囲気がガラリと変わる。重々しいトビラの向こうには、、、、。というようにトビラがその先の空間を人に想像させ、そのデザインと機能が個別的な空間を取り持つようにつなぎ合わせ、ひとつの家ができあがる。

建具は、本の表紙のようなもので、見て触って読んで、新たな世界へと入り込む。「建具」もその表紙に似たようなもので、その先にある空間を想像させるコミュニケーションツールのように思えてきた。それまでは、家のデザインを考える上で「建具」は特に重視はしていなかった。しかしながら、毎日の暮らしの中で触れる機会が多く、デザインと機能、また耐久性を問わえる大切な環境作りの要素だということを再認識した。そして、ジブンの人生を振り返ってみると、どれだけ立て付けの悪い建具の中で暮らしてきたことかと思い返してしまった。

古材

桜花園へ

わが家の設計指針の一つに「バリアフリー」を掲げていた。長く住む家にしたいということもあり、車椅子や介護が必要になっても対応ができるように空間に少しバッファを持たせる。そんな背景もあって、わが家の建具はすべて「引き戸」で配置することにした(勝手口は唯一、ドアだけれども)。

僕らは、葉山にある「桜花園」に出向いた。香港の九龍城のような佇まいに胸がドキドキする。いまにも朽ち果ててしまいそうな雑多な空間が落ち着く身としてはそこにいるだけて気持ちがあがる。そんな余韻に浸りつつ、これから数十年の暮らしをともにする建具を選ぶことになった。

店内には建具がびっしりとストックされている。

建具に歴史あり

店主と会話を重ねながら、気になった建具を見せて頂く。建具の裏側にあるストーリーがどれも濃い味でたまらない。経年劣化した風合い、年代を感じるガラスの質感が感覚器を通して身体に呼びかけてくる。わが家に向かい入れるべく建具はど〜れだ!とい言わんばかりに品定めモードに入っていった。

いくつか気になる建具を並べていただき、図面を見ながら、平面図を脳内に3Dに投影して生活を妄想する。その妄想の中に眼前にある建具を落とし込み、さらに想像する。

朝起きたとき、掃除をしているとき、お腹が痛いとき、喧嘩をしたとき、地震がきたとき、、、いろんなパターンを想定し暮らしをイメージする。

建具を空間順に並べ総覧する。この総覧作業はとても見事な作業で、建具を並べてみることによって、リビングから見た建具の並び、キッチンから見た建具の並び、いろいろなテクスチャが暮らしの中にあって、その建具の向こうに日々旅しているようなもんなんだなぁ。そんなことを考えていた。

建具を一枚一枚並べて総覧する

秘蔵の一枚

そうしている間に何やら店主が奥からゴソゴソと建具を出してきてくれた。明らかに上質な建具で木目とさわり心地が安堵感を与えてくれた。この建具は、材木座にあった名家の別荘に使われていたもので、店主秘蔵の建具だった。秘蔵の一枚が、できるだけそのままの姿で、長く、その先の未来へと受け継がれていくことを店主は望んでいた。そして、僕ら家族は店主に選ばれ、その秘蔵の一枚を購入する権利を頂いたのだった。

その一枚の意味合いは、新たに工場で作られた建具とは比べようもない。たとえ価格が同じ、機能が同じであったとしても、この建具が過ごしてきた時間と店主の想いに勝るものはない。時間と想いが豊かな表情をあぶり出す。太陽の恵みを毎日いただくように、その建具の豊かさの恩恵を受けて暮らしてゆきたい。

そんな想いを携えて家づくりは進みます。

この建具を七世代先の未来に受け継ぐことができますように。

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